「酒は飲まない、あえて」なライフスタイル「ソバーキュリアス」とは?
「あえてお酒は飲まない」をライフスタイルに生きていく。
「ソバーキュリアス」という言葉をご存じでしょうか?
決してお酒が飲めないわけではないです。もちろんお酒を飲みすぎて病気になったわけでもなし。医者からアルコールの摂取を禁止されているわけでもなし。
体質的にはいたって健康で、むしろお酒を飲むのは大好きだったくらい。
それこそ1日の終わりに楽しむ晩酌のよさ、プロジェクト終了後の打ち上げで乾杯する喜び、時には辛いことをお酒で忘れた日々もあったり。
そんなお酒の楽しみを封印して、今は「あえて」お酒を飲まない生活を選択しているのが「ソバーキュリアス」というライフスタイルです。
お酒を飲まないと言えば、世間からは「体質的にお酒が飲めないのかな」と思われがちですが、そうではなくて「あえて」お酒を飲まないだけ。
だから単純な禁酒ともすこし意味合いが違ってくるのがソバーキュリアス。
お酒を飲まないのに禁酒とは違う?まさか少しくらい飲んでもいいとか?
なんて疑問が浮かんでくる「あえてお酒を飲まない生活ことソバーキュリアス」についてご紹介したいと思います。
ソバーキュリアスは造語
人によっては「ソバーキュリアス」と聞いても「なにその言葉?」とピンと来ない人も多いかなと思います。
それもそのはず。ソバーキュリアスはそもそも造語です。
「酔っていない,しらふの」という英単語 sober(ソーバー)と、「好奇心が強い」という英単語 curious(キュリアス)を掛け合わせた造語です。
体質的にはお酒が飲めるけど、自分の健康に気をつかい、毎日の生活を有用にするためにあえてお酒を飲まないことを選んでいる。
そんなライフスタイルが「ソバーキュリアス」と呼ばれています。
ざっくり一言にまとめと、「お酒をあえて飲まない生き方」といったところでしょうか。
なんだか呪文みたいですけどね。ソバーキュリアスって。それこそハリポッターが唱えても違和感がなさそうなくらいに。
ハリーポッター「サーバーキュリアス!」
・・・まるで違和感がないです。
ちなみに余談なのですが、ハリーポッターを演じたダニエル・ラドクリフは若い頃はアルコール依存症で、ソバーキュリアスとはかけ離れた生活を送っていました。
なんでもハリーポッターの撮影が終盤にせまった頃、プレッシャーやら不安やらからアルコール依存症になったのだとか。今は禁酒に成功していて、ソバーキュリアスを実践しているセレブなんかで検索するとダニエルの名前が出てくることもしばしば。
実は世界的なトレンドにもなりつつあるソバーキュリアス。
さて誰が作った言葉かというと、英国出身のルビー・ウォリントンという記者によって生み出されました。
2019年に出版された彼女の著書「Sober Curious」にて爆誕です。ソバーキュリアス。
本が出版されるやアルコール依存が問題視されていたアメリカの時代背景もあって、「自身の健康と心のことを考えお酒を控えよう」というライフスタイルがミレニアル世代を中心にうけて、ソバーキュリアスはちょっとしたトレンドワードに!
ちなみにルビー・ウォリントンはアルコールに溺れた過去を持ち、ソバーキュリアスを実践してもなお、ふいにアルコールが恋しくなるほどお酒が大好き。そんな彼女がアルコールを断ち、率先して「アルコールのないライフスタイルは素晴らしいよ」と提唱するのだから説得力もあるというもの。
ルビー・ウォリントンがいかにしてソバーキュリアスに至ったのかは、2021年に出版された「飲まない生き方 ソバーキュリアス Sober Curious」という訳本にも書かれています。
ソバーキュリアスを試みるものたち「ソバキュリアン」のことも詳しく知れるので、気になった方はぜひ一読を。
ソバーキュリアスは禁酒ではない!
よく断酒、禁酒と間違えられるのがソバーキュリアス。
そりゃあそうですよね。お酒は飲めるけどあえて飲んでいないって、それ側からみれば禁酒あるいは断酒ですから。
しかし、ソバーキュリアスは断酒ではないのです。とても似ているんですけどね。
禁酒・断酒とは似て非なるもの、それがソバーキュリアスです。
じゃあ禁酒とソバーキュリアスはなにが違うのか?
さて、ここで思い出してみてください。ソバーキュリアスという言葉の語源を。
ソバーキュリアスは、「ソーバー(酔っていない)」と「キュリアス(好奇心が強い)」を掛け合わせた言葉だということを。
ソバーキュリアスは、「飲めるけど飲まないんだ、あえてね」「健康と日々の有用性を考えて、お酒を飲まないんだ、あえてね」というライフスタイルだということを。
そう、ソバーキュリアスはあくまで「好奇心を満たすために断酒している」のです。
つまり好奇心旺盛なシラフなんですよね。
どうしても禁酒というとネガティヴなイメージがありますよね。健康面から禁酒することにした。病気で禁酒を余儀なくされた。飲みすぎて金欠になったから禁酒しているなどなど。
本音をいえばお酒を飲みたい。だけど仕方ない事情があって泣く泣くお酒を封じている・・・。
禁酒という言葉の周囲には、なんとなくネガティヴなイメージがつきまとっています。
しかしソバーキュリアスはそうではないのです!
あくまで自らのため、自らの意志で、自ら望んで禁酒しています。
いわば心構えが違うというワケですよね。ポジティブにお酒を封じているのですから。
お酒を飲めば最高にハッピーな気分になって、イヤッホーって踊り出したくなるくらいハイになって、楽しい気分になれることは十分にご承知。それこそ痛いくらい熟知しています。
だって昔はお酒を飲んでいたのだもの。
正直なところお酒の栄光がよぎることもある。ちょっと一杯くらいなら・・・。
だが断る。
お酒は飲まない。体質的にお酒は飲める。けど飲まない!だが断る!
健康で有意義な生活のため自分の心をいたわるため、お酒は飲まないことにしています。
いわばソバーキュリアスは「禁酒の一歩先の世界」といっても良いのかもしれません。
お酒を飲むのはあり?
禁酒・断酒とソバーキュリアスはどう違うのか?
根本的に違う点がひとつあります。
それはソバーキュリアスは「絶対にお酒を飲んじゃダメ」というわけでもないこと。
・・・ちょっと待て。
さっき、「お酒は飲めるけど、飲まない、あえてね」って意識高げに語ってませんでした?
語ってましたよね?
あくまでポジティブに禁酒するって。健康と有意義な生活のためにお酒を飲まないって。それがライフスタイルだって。
言ってましたよね?どういうこと?
結局のところ飲まないの?飲むの?どっちなのよ?
・・・と、混乱を呼ぶのもまたソバーキュリアスだったりします。
結論から述べると、時と場合によってはお酒を飲むこともあるのがソバーキュリアス。
例えば、祝い事の乾杯の席とか。
配られたシャンパングラスに断固として「ノー」を突きつけるわけではなく、場の空気を乱さないよう快くグラスを受け取ったりするのがソバーキュリアス。
そして最初の一口だけ、ほんと舐める程度に、あくまで社交辞令として嗜みます。
ただし、最初の一杯、その一口に必ずとどめておく!
確固たる意志をもってそれ以降は絶対に飲まない!
どうしてお酒をペロリと舐めるかといえば、お酒の存在は決して悪ではないから。そしてお酒を飲む人にも自由があるから。
自分から「お酒を飲まない」というライフスタイルを意識を高くして実践しているのは良いことです。けれど、それでお酒を飲む人たちを不快にさせることはダメ。
だから「普段はお酒を絶っておりますが、この場は祝いの席に預からせています」とひとなめだけペロリ。
といったことが起こったりします。
なるほど、じゃあTPOをわきまえればお酒を解禁してもいいってことか!
と勘違いされがちなのですが、そういうわけでもなのがソバーキュリアスです。実にややこしいですが・・・。
例えば、誕生日だけはお酒飲んでよし、週一でお酒飲んでよし、特別な日は飲んでよし、といったものは全てNG!
もちろん場の空気を乱さないために、ではジョッキ一杯だけゴクリ・・・というのもNGです。
これはソバーキュリアスではないです。
ソバーキュリアスを語る偽物だとも言えましょう。
なぜなら、特別なタイミングでお酒を飲むことを楽しみにしているから。
いわばライフスタイルにお酒が入ってしまっているんですよね。
健康と日々の充実のために、あえてお酒を飲まないをライフスタイルに徹しきれていないです。禁酒に対する意識が低いわけです。
なにより、その一杯をきっかけにお酒を飲まないという鉄のルールが崩壊する可能性すらありますから。
ソバーキュリアスはあえてお酒を飲まない「ライフスタイル」です。あくまでポジティブに禁酒していないとダメなのです。
今すぐ始められるソバーキュリアス!
いますでに禁酒している人も、これから禁酒を予定している人も、そうでないお酒大好きな人も、いつでも始めるられるのがソバーキュリアスです。
ライフスタイルですからね。ソバーキュリアスは。
やり方はとっても簡単!
好奇心を満たすために断酒する。それだけ。
好奇心を満たすってどういうこと?
なんて疑問もありそうですが、これだって簡単。
例えば週末は必ず飲んでいた飲酒をやめて、代わりにジムに通いはじめてみるとか。あるいは新しい習い事をはじめてみる。本を読むのもイイですね。映画館でレイトショーというのも素敵です。
お酒のないシラフ状態で自分の興味のあること、ワクワクすることに触れるだけでOKです。
もちろん人によってはお酒こそ最強の好奇心なんだよぉぉ。と嘆くもいるかもですね。かくいう私だってそうでしたし。
でも意外なことにソバーキュリアスを実践してみると、ぽっかり空いた穴になにかがスッと入ってくるんです。
お酒の代わりに手を取ったノンアルが想像以上にも美味しいとかもそう。お酒にバイバイしたから出会えた味だったりもします。
さて、もう準備は整いましたね。
「禁酒することにしたんですよね」あるいは「禁酒しています」
その言葉の代わりに、
「ソバーキュリアスなんですよね!」あるいは「ソバーキュリアンです!」と言えば、もうあなたは立派な初心者ソバキュリストです。
きっと周囲からは、「ああ、この人は自分を持っているなと。お酒へのアプローチも全部、ソバーキュリアスなやり方で集中しているなと、そういう生き方を好んでいるだな。あえて」といった具合に、サッカー元日本代表の本田圭佑ばりの意識の高さでお酒と対峙していると思われるはず。
いちおう述べておきますが、「ソバキュリスト」なんて言葉はないです。
すみません、私がいまここで作り出した造語です。
ではまた。
参考文献:「飲まない生き方 ソバーキュリアス Sober Curious」ルビー・ウォリントン著